作製方法の説明

凸レンズ1枚の直進フォーカス型の自作レンズ<滲色(にじいろ)レンズ>の作り方 1~4
1. 計画と購入パーツ群の説明
2. 作製方法の説明
3. 撮影方法と作製したレンズの評価
4. デジタルのRAWでの撮影をお勧めします

作製方法

▽カメラマウントからヘリコイド本体購入したパーツを組み立てるだけです。

▽ヘリコイドの先にレンズをつける工程ヘリコイドの先につけるプラスチックの筒(TOMMYのBORG アイピースアダプタ 延長筒)の適当な位置にレンズを貼り付けます。

ヘリコイドの先につけるプラスチックの筒

<ピントの基本的な説明>
レンズの焦点距離と、レンズとカメラのCCD面またはフイルム面までの物理的な距離(間隔)が同一の場合、無限大でピントが合います。無限大より手前の場合は、無限大のときよりもレンズとカメラのCCD面またはフイルム面までの物理的な距離(間隔)を広げないとピントが合いません。手前になるにしたがって、レンズをCCD面またはフイルム面より、レンズを離して(繰り出して)いきます。

▽レンズを貼り付ける位置の計算
計算するために基準となる位置を「ヘリコイドの先端」(ヘリコイドは一番短い状態)と決めました。次に、ヘリコイドの先端から、カメラのCCD面またはフイルム面までの距離を測定しました。井上の購入したパーツを組み合わせると89.8mmでした。井上の加工精度を考えるとミリ単位で充分なので90mmとしました。

カメラのCCD面またはフイルム面までの距離を測定

EOS 1(フィルムタイプ)のカメラを使ってノギスで実測しました。デジタル一眼ならCCDにキズがつきそうで怖くてできなかったです。

カメラのCCD面またはフイルム面までの距離を測定

【注意事項】
一眼レフカメラのCCDにノギスなどを直接接触させないでください。キズがついたりCCDが壊れたりする危険があります。フィルムタイプの一眼レフカメラでも、ノギスでミラーボックス内などにキズがつく可能性があります。また、ノギスを差し込んだままシャッターが閉じられると、ミラーシステムやシャッターに甚大な被害がでる危険があります。

Canon EOSシリーズの場合、マウント面からCCD面またはフイルム面までの距離(フランジ)は44mmです。
ヘリコイドの先端からカメラのCCD面またはフイルム面までの距離=44mm(フランジ)+マウント面からヘリコイドの先端までの距離

▽実際に用意したレンズの貼り付ける位置を計算してみる「ヘリコイドの先端」位置からCCD面またはフイルム面までの距離は、90mmとしました。

焦点距離(f値)54mmの凸レンズは、54mm - 90mm = -36mmレンズの貼り付ける位置は、ヘリコイドの先端から、カメラ側に-36mm近づいたところ。

焦点距離(f値)80mmの凸レンズは、80mm - 90mm = -10mmレンズの貼り付ける位置は、ヘリコイドの先端から、カメラ側に-10mm近づいたところ。

焦点距離(f値)121mmの凸レンズは、121mm - 90mm = 31mmレンズの貼り付ける位置は、ヘリコイドの先端から、外側に31mm離れたところ。

▽無限大位置のマージンを考慮する無限大の位置は多少余裕が必要です。正確にはレンズの焦点距離によっても変えるものだろうけど、だいたい2ミリ程度(←適当な数字)にしました。計算上の無限大位置よりもCCD面またはフィルム面に2ミリ近づける位置としました。

<無限大の位置>無限大の位置は、空気の湿度や温度で変化するらしいです。メーカーのレンズでも無限大表記は少し余裕がある書き方(Lのような記号)になっています。オートフォーカスではなく、マニュアルでピントを合わせてみると無限大側にほんの少し回転する余裕があるので実感できます。

▽無限大を考慮したレンズの貼り付ける位置
焦点距離(f値)54mmの凸レンズは、カメラ側に-38mm近づいたところ
焦点距離(f値)80mmの凸レンズは、カメラ側に-12mm近づいたところ
焦点距離(f値)121mmの凸レンズは、外側に29mm離れたところ

※計算は簡単に終わるのですが、作製する上での問題点として、レンズの直径がプラスチックの筒と一致していないことでした。

▽最初に一番簡単そうな121mmの凸レンズを作製しましたこのレンズは、ヘリコイドの先端から外側に29mm離れたところにレンズを貼り付けます。プラスチックの筒だけでは長さが足りませんでした。購入した同じプラスチックの筒の外側部分を不足している長さ分だけノコギリでカットし、サンドペーパーできれいに断面を修正してから、接着剤(セメダインのスーパーXの黒色)で張り合わせました。筒を延長をしたことになります。その延長した先にレンズを接着剤で貼り付けました。

121mmの凸レンズ

※レンズの接着時は、光軸に対してレンズが垂直になっていることと、実際に無限大でピントが合うかどうかを確認作業をしてください。

計算した場所にセロテープで仮止めしてから、カメラにレンズを付けてファインダーで確認作業をしました。
光軸に対してレンズが垂直になっていることの確認方法は、筒とレンズの位置関係を目視で確認しました。凸レンズ1枚だと、周辺画像がぼやけているのでファイダーを見てもよくわからなかったです。
無限大でピントが合うかどうかの確認作業は、野外で遠い被写体をファインダーで確認しました。このときに無限大側に、ヘリコイドが少し回転する余裕(無限大のマージン)があることも確認しました。
うまくいかなければ、レンズ位置の微調整をします。仮止めをしたまま、つまよう枝で少しずつレンズを押すようにしました。数ミリも移動させる必要はありませんでした。
何度も確認作業が必要でした。確認が終わったら、仮止めの反対側から接着剤を少量塗って位置を固定します。つまよう枝の先に接着剤を少量乗せて、ピンポイントに接着するようにすると作業しやすかったです。
その後、接着剤が乾いてから、仮止めのセロテープを注意深く外して反対側も、つまよう枝を使って接着しました。

▽テスト撮影した結果、問題点が発覚レンズは半分に割れても結像することを知っていたので、適当に接着剤で貼っていました。
しかし、ピントがないところの光のサークルがきれいな円形にならず、そのレンズの光路中の一番汚い円もどきの型になることを発見しました。
下の写真は上の写真の121mm凸レンズで撮影

未対策の121mm凸レンズで撮影

121mmの凸レンズの対策として、黒紙のドーナツ状のものを付けて、接着部分をきれいな円形になるように改造しました。他の作製中のレンズは、プラスチックのパーツを多用して、鏡胴内の光路は全てきれいな円形になるように整形しなおしました。

<プラスチックの円形パーツの加工について>
プラスチックを円形に整形するのは想像以上にむずかしいです。工具とスキルがないので、ひたすら元々円形だったパーツをヤスリとサンドペーパーでサイズを調整しながら整形しました。整形作業はは時間がかかり根気がいります。しかも、慣れない作業で、次の日はあちこち筋肉痛というなさけないこともありました。
サイズの大きいものから小さいものへは削ることで対応できますが、ちょっと小さい場合はの処理が問題でした。
東急ハンズで見つけた「ペット-G」というペットボトルの素材を薄い板にしたものがあります。プラスチック板のなかでは、曲げに強くやわらかい製品だと説明がありました。しかも、普通の接着剤(セメダインのスーパーXなど)で接着可能で、1枚268円の安さでした。
0.3mm厚の板を購入し、カッターで細く切って、サイズアップする円形パーツの外側を海苔巻きのようにクルクル包んで接着します。接着剤が乾くまで、セロテープで固定しておきます。
次に、100円ショップで購入した双眼鏡です。

100円ショップで購入した双眼鏡

解体すると適当な大きさの円形パーツが数種類確保できました。対物レンズは105mmの凸レンズで、接眼レンズは凹レンズ(焦点距離は不明)です。

▽開放F値の計算方法
開放F値=焦点距離(f値)÷光学経路の最小口径

焦点距離(f値)54mmの凸レンズは、F4.0にしたかったので、内径の直径が13.5mmの黒紙の円形しぼりを付けました(しぼりの位置:レンズの被写体側直前)。

54mmの凸レンズ

焦点距離(f値)80mmの凸レンズは、F4.0にしたかったので、内径の直径が20mmの黒紙の円形しぼりを付けました(しぼりの位置:レンズのCCD側直前)。

80mmの凸レンズ

焦点距離(f値)121mmの凸レンズは、取り付けているプラスチックの筒の最小口径が23.8mmのため、F5.0になっています(しぼりの位置:レンズとCCD側の間でレンズ側に近い位置)。

121mmの凸レンズ

<しぼり位置について>
光路中のしぼり位置によって歪曲収差が変化するそうです。
絞り→レンズ→CCD面またはフイルム面なら、たる型歪曲収差、
レンズ→絞り→CCD面またはフイルム面なら、糸巻き型歪曲収差と言われています。
今回のレンズ作製では、しぼり位置についての考察はしていません。簡単にしぼり位置が変更できるような鏡胴を作製してから、テストしてみようかと検討中です。
円形カッターを使用すると、きれいに円形がくり抜けます。

円形カッター

<レンズの焦点距離(f値)の測り方>
テーブルの上でレンズを持つと、蛍光灯などがはっきり映る位置があります。これが、天井の蛍光灯との距離での焦点距離になります。
正確に測るには、昼間に太陽が一番小さく映る点を探して、その点とレンズの中心線が焦点距離になります。

レンズの焦点距離の測り方

【注意事項】
光学レンズで太陽を絶対に直接見ないでください。視力障害や失明などの危険があります。

▽ほこり対策
デジタル一眼レフなので、ミラーボックス部分にホコリが入るとシャッターを切ったときにCCDにホコリが張り付いたりします。
フォーカシング部分より内側に透明ガラスの仕切りで、レンズ交換したときに侵入したホコリをミラーボックス側に移動をさせないようにほこり対策をしました。

ほこり対策

レンズマウントの直ぐ近くに透明ガラスの仕切を貼り付けていいます。貼り付けた透明ガラスは52mm径のUVフィルターです。
フィルター外枠のレンズ側に細い丸い針金が溝にはめてあって、フィルターガラスを止めていました。この針金を注意深く外すと、ガラス部分だけが取り出せました。
作業されるときは、ガラスなので割れたり、ケガをしないように気を付けてください。
取り外したフィルターのガラスそのものを、マウントの内側に接着剤で貼り付けました。
少し直径が大きかったので、ガラス細工をする小型のルーターで約1ミリ程度削りました。古いUVフィルターが余っていたので、この径を利用しましたが、もうワンサイズ小さいフィルターを購入したほうが作業が楽だったと思います。
それと、逆光時にフィルターのガラス面に反射したフレアみたいなものが見えるときがあります。ほこり対策は違う方法を考えたほうがよいかもしれないです。今後の課題とします。

凸レンズ1枚の直進フォーカス型の自作レンズ<滲色(にじいろ)レンズ>の作り方 1~4
1. 計画と購入パーツ群の説明
2. 作製方法の説明
3. 撮影方法と作製したレンズの評価
4. デジタルのRAWでの撮影をお勧めします

<このページの情報と免責事項など>
※レンズの作り方のページは、凸レンズ1枚を使った撮影レンズに興味のある方が、レンズを自作するときの補助的な情報になればと公開しています。
※このサイトで紹介されている方法を実施して、レンズ作成時の怪我などやカメラの故障などがあっても井上写真事務所はいかなる義務や責任も負いかねます。あくまでもご自分の責任と判断のうえで実施してください。
※このサイトは、凸レンズ1枚または収差のあるレンズでの撮影を推薦しているのではありません。写真表現方法のひとつとして紹介しています。

この投稿へのコメント

コメントはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL